十二月晦日まで後一週間になった。
先日の東国三社の香取神宮や
代々木八幡宮では、ご社殿の前に
大祓『茅の輪』が用意されていた。
「大祓」の神事は、毎年六月と十二月
の晦日(みそか:月の末の日)に行わ
れた。大祓の『日本書紀』に見える最
初は、天武天皇五年(676年)八月
辛亥(十六日)の条である。
ここで大祓の基になった祓(はらへ)
について一見しておく必要がある。
祓の原義は、罪を犯した者に対して、
その罪に相応する物品(祓へつ物)
を出させて、犯した罪を解除してやる
日本古代の社会的行事であった。
この祓に、新しい精神を与えて新生
させ、国家的な行事に高めたのが、
天武天皇朝の大解除(大祓)であった。
天武朝の大祓の精神は、大祓によっ
て国中のあらゆる罪を一掃して、新し
い国家社会を建設しようとするところ
にあった。大祓の創始は、天武朝に
おける神衹祭祀の政策の一環をなす
ものであった。大祓が国を挙げての
大規模な行事であったことは、天武
五年八月の大解除に、国造や郡司が
祓柱を出すだけではなく、戸毎に麻一条を出すところにもよく表れている。
これは、全国民が大祓に参加することを示している。
かくして大祓によって、国中のあらゆる罪が祓われるのである。
天武天皇十四年(685年)正月丁卯(二十一日)に、爵位の名号が改められて、
明・浄・正・直・勤・務・追・進の八語が柱として立てられた。
これは、当時の日本人に求められた国民道徳の標語とも言うべきもので、
それは大祓いの目標とする精神と相通ずるのである。すなわち、大祓により
あらゆる罪が祓われて、人々が、明き浄き正しき直き心となり、これからの仕事
に勤しみ務め追い進むべきことが、指示されている。
この精神は、『続日本紀宣命』の「明き浄き直き誠の心」へと続いて行く。
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